2017-09-11 / 最終更新日時 : 2017-09-11 pharmacistwriter 薬剤師ライター

薬局クエスト―伝説の薬局を探して―

登場人物

ヤクオ
なんかいろいろあって、薬局を辞職。
活き活きと楽しくはたらける伝説の薬局と仲間を探している。

クスリン
「クスリンの薬剤師ジンザイ商会」の経営者。
「僕と契約して、給料据え置きボーナスなしではたらいてよ」が口癖。

ファーマン
迷える薬剤師の味方。伝説のヒーロー。
勤務時間は9時-18時。

導かれし薬剤師たち

あっさり辞められてよかった～。
これからが、ぼくの薬剤師人生、本当のスタートだ。

自分の「天職」を全うすることができるという「伝説の薬局」を求めて、仕事探しをするぞ！！！

と意気込んで、ネットサーフィンをしたり、求人フリーペーパーや新聞の求人広告を見始めて１カ月。

伝説の薬局は未だ見つからない。

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]あれだな。
やっぱり、一握りの薬剤師しかたどり着けないという伝説の薬局への道のりは厳しいんだな。

焦らずにいこう！　と、言いたいところだけど、懐が寂しくなってきたぞ。

住民税、年金、健康保険の支払いが、こんなに重くのしかかってくるとは……。

無職おそるべし……。
とりあえず、何か仕事を探して働き始めないと……。[/voice]

そんなとき、ぼくは「伝説の薬局」を見つける手助けをしてくれる「クスリンの薬剤師ジンザイ商会」という人材紹介サービスの会社を見つけた。

クスリンの薬剤師ジンザイ商会には、全国から薬剤師に関するさまざまな情報が集まってくる。いわゆる薬剤師専門の転職や就職の支援サービスを提供する会社らしい。

オーナーのクスリンが、集まってきた薬局の情報と、職を求める薬剤師をマッチングさせて、「この薬局こそが、その人の“伝説の薬局”」という薬局を紹介してくれるという。

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]あ、あの……。ネットで見た東京都港区の案件なんですけど……。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/クスリン顔アイコン.png” name=”クスリン” type=”l”]どーもどーも。
お問合せありがとうございます。
あの案件ですね。人気の案件なので、現状を確認しますね。

では、まずこちらのシートにプロフィールと、これまでのご略歴の記載をお願いします。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]えっと……。
まずはまだ応募できる状況かを確認してもらってから……。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/クスリン顔アイコン.png” name=”クスリン” type=”l”]すみませんねぇ。
企業さんの情報は、会員登録が終わってからじゃないとお教えできないんですよ。
というわけで、こちらお願いしますね。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]・・・・・・。[/voice]

[aside]

サービス利用のため、とりあえず会員登録をお願いします。

転職支援サービスを使うには、まず個人情報の登録（履歴書、職務経歴書に書くような内容）を求められるぞ！

頻出ワードなので、ぜひ押さえてほしい。

登録なしには、どんなにささいな情報も教えてもらうことはできないはずだ。

ラスボスの魔王の城が、徒歩でも船でも気球でもアクセスできないような鉄壁の守りで固められているように、人材紹介会社に集まる情報も強固な守秘義務という壁に守られているようだ。

逆に考えると、自分の情報も漏れにくいということに違いない！　そう考えたら、利用するのに安心なのかも。[/aside]

幻の高額案件

結局、問合せた案件は人員充足ということで応募できなかった。
なんか、個人情報を都合よくとられたみたいでモヤモヤするが仕方ない。というか、モヤっている場合じゃない。

国民健康保険、国民年金、住民税、家賃、カードの支払いが目前に迫っている。はたらかねば・・・。

と、思っていた矢先にクスリンから連絡が入った。

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/クスリン顔アイコン.png” name=”クスリン” type=”l”]どーもどーも、ヤクオくん。
地方派遣の案件なんだけど、家賃交通費つきで時給4000円。

どうかな？[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]（おお、これはなんだか「伝説の薬局」を探す冒険っぽい！）

あ、ぜひお願いします。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/クスリン顔アイコン.png” name=”クスリン” type=”l”]オーケー、オーケー。まかせて！
じゃあ、詳細決まったらまた連絡するね。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]ありがとうございます！！！
（やった！一歩前進だ！！）[/voice]

～それから1週間～

音沙汰無し。

～それから、さらに1週間～

まだ音沙汰無し。
ちょっと、連絡してみるか。

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]あのお…、この間の案件どうなりましたか？[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/クスリン顔アイコン.png” name=”クスリン” type=”l”]ごめん、担当者がつかまらなくてさあ。また連絡するね。[/voice]

～それから、さらに、さらに1週間～

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]あのお…、この間の案件……。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/クスリン顔アイコン.png” name=”クスリン” type=”l”]あ、ごめんね。
あれね、今回無しになっちゃった。

人気案件は早い者勝ちなんだよね。またよろしくね。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]・・・・・・。[/voice]

結局、母さんにお金を借りて諸税を支払いました。
伝説の薬局はいったいどこにあるんだろう。

[aside type=”warning”]
「早い者勝ち」

人材紹介サービスを使うと良く出てくるキーワードだ。
ぜひ覚えておいて欲しい。

案件の中には、言葉通りの「早い者勝ち」の即決案件と、「先方さんが、ほかの応募者さんと比較検討して決めたいようなので、あと1週間待ってください」と待機が必要な案件の大きく2タイプがあるようだ。

派遣だと「早い者勝ち」案件が多く、正社員だと「じっくり比較検討」で待たされる案件が多い印象。[/aside]

空と海と大地と呪われた薬局

無策で辞めたのが失敗だったか。
辞職して2カ月も経ってしまった。
いろいろ問題のある薬局だったけど、辞めずにガマンすればよかったのだろうか……。

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/クスリン顔アイコン.png” name=”クスリン” type=”l”]この間の高額時給の案件、ごめんね。

来週から都内・時給3000円の案件があるんだけど、紹介予定派遣ってことで、どうかな？[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]紹介予定派遣ってことは、お互いに気に入ったら正社員で働けるってことですか。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/クスリン顔アイコン.png” name=”クスリン” type=”l”]そそ。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]合わなかったら、他の案件を紹介してもらえるってことですよね。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/クスリン顔アイコン.png” name=”クスリン” type=”l”]もちろん。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]そういうことなら……。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/クスリン顔アイコン.png” name=”クスリン” type=”l”]ありがとねー。
ほんと、良い薬局だからさあ。よろしくねー。[/voice]

～勤務1日目～

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]本日からお世話になります、クスリンの薬剤師ジンザイ商会から来たヤクオです。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/社員アイコン.png” name=”社員A” type=”l”]あれぇ？
うちの店舗じゃないと思いますよぉ。
（ジェルネイルでぴかぴかの指で、髪の毛いじいじ）[/voice]

～クスリンに確認の電話～

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/クスリン顔アイコン.png” name=”クスリン” type=”l”]ごめんねー。
先方との連絡の行き違いで、別の店舗だったみたい。

正しい店舗は・・・・・・。[/voice]

～正しい勤務先へ移動～

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]（駅から徒歩1分のはずなのに、大型商業施設の中のテナントだから入店までに15分もかかる！！！　まるでダンジョン！）[/voice]

～薬局にようやく到着～

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/社員アイコン.png” name=”社員B” type=”l”]連絡の行き違い、ということは聞いていますが、遅刻は遅刻なので、その分の時給はお出ししませんから。そのつもりでお願いしますね。
支度できたら、すぐに勤務開始してください。
あと、昼休みは施設外に出られないので施設内の食堂を利用してください。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]・・・・・・。
（ロッカーはおろか、荷物置きも用意してくれないのか。着替えや荷物は全部床置きとは・・・）[/voice]

～勤務2日目～

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/社員アイコン.png” name=”社員C” type=”l”]派遣さんなら、なんでもできるはずですよね！！！　だからエントリーしたんですよね。
うちの薬局では、くぁwせdrftgyふじこlp[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]（いやいやいやいや。派遣薬剤師はエスパーか！　「うちの薬局では」もなにも。まだ、何も説明を受けていないのに御社のローカルルールなんて分かるわけないでしょう……）[/voice]

～勤務3日目～

朝9時。
勤務開始時間。
薬局が開いていない。

～クスリンに電話で確認～

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/クスリン顔アイコン.png” name=”クスリン” type=”l”]ごめんごめん。
今日は臨時休業なんだって。
連絡するの忘れてた！　ほんとごめんね。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]・・・・・・。
辞めさせていただきます。[/voice]

[aside]
派遣薬剤師「あるある」

すべて、わりとよくあるトラブル。

トラブルの原因は、勤務先にある場合、紹介元にある場合、その複合パターンとさまざま。

はたらく人に対して、誠実な勤務先と紹介元を選びたい。

[/aside]

もうダメだ。

薬剤師として輝ける、やりがいをみつけられる伝説の薬局ではたらきたくて辞職したはずなのに・・・・・・。

伝説の薬局なんて、見つけられっこないし、そもそも存在しないんだ。

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ファーマン顔アイコン.png” name=”なぞの男” type=”l”]困っているようだね、そこの君。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]！？[/voice]

給料と雇用条件の守り人

ぼくの前に現れた、白衣をはためかせるあやしい男は、薬剤師業界の伝説のヒーロー「ファーマン」だった。

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ファーマン顔アイコン.png” name=”ファーマン” type=”l”]私ははたらく薬剤師の味方ファーマン！　こういう者だ。
（名刺、すっ）[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]え、あ、これはどうもご丁寧に。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ファーマン顔アイコン.png” name=”ファーマン” type=”l”]君からはたらくことに対する悩みのオーラ「ファーマダークネス」を感じた。でも安心して欲しい。

これからは君の雇用と給料は私が守る！[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]
（え？　ふぁ、ふぁーまだーくねす？？？　なんじゃそりゃ。というか、またやばいのにつかまっちゃった！？）[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ファーマン顔アイコン.png” name=”ファーマン” type=”l”]おっと、話の途中だけど失礼。
18時なので私はこれで！！

ヤクオくんも、早く帰宅するがいい。もう18時だよ。ではまた！[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]
え！？　ちょっと・・・・・・[/voice]

勤務時間は9時-18時で、基本的に残業はしないというヒーローは、一枚の名刺をぼくの手に残して立ち去っていった。

あの人は信頼できるのだろうか。
今度こそ、信じて良いのだろうか？
分からない。
でも、後がない。

ぼくは迷う気持ちを抱えたまま、帰りの電車の中でファーマンにメールを送った。

そして伝説の薬局へ・・・？

ダンジョン薬局との契約が終了するその日、ファーマンと近所のカフェで待ち合わせた。求人案件を紹介してもらうためだ。

ファーマンが差し出した求人票はたった１枚。

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ファーマン顔アイコン.png” name=”ファーマン” type=”l”]今の君にぴったりの案件だ。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]駅から近いけど、まさかダンジョンじゃないですよね。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ファーマン顔アイコン.png” name=”ファーマン” type=”l”]もちろんだとも。

分からないことがあったら、何でも聞いてほしい。
条件の折り合いがつかない箇所は、先方と話し合って交渉してみるよ。
合わないようだったら、もちろんほかの薬局を探して紹介する。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]ありがとうございます。
よく考えてお返事します。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ファーマン顔アイコン.png” name=”ファーマン” type=”l”]薬局見学も出来るから、雰囲気を見てみたいという希望があるなら言ってくれ。[/voice]

[voice icon=”http://pharmacistwriter.com/wp-content/uploads/2017/09/ヤクオ顔アイコン.png” name=”ヤクオ” type=”l”]はい。[/voice]

今度こそ、薬剤師が自分の力を最大限に発揮できるという「伝説の薬局」に出会えるのだろうか。

まだ分からないけど、ずっと真っ暗だったぼくの薬剤師人生にようやく光が見えた気がした。